自分のペースで勉強をして、成績を上げたいというニーズに応えるのは難しい。
よく個別指導塾で『自分のペースで勉強できる』と謳っています。
勉強が苦手な生徒が、本当に自分のペースで勉強してしまったら成績は上がりません。
『生徒の分からないところを的確に見つけて、そこを対処すれば成績上がるでしょ?』
とお考えの方。
『生徒の分からないところを的確に見つける。』のは簡単ではありません。
間違えた問題だけを解説しても状況が改善されないことは多いので、【生徒が勉強を分からなくなったところ】を見つけて抜本的に問題を解決しないと成績が上がりません。
多くのお場合、
間違えた問題 ≠ 分からなくなったところ
なのです。
例えば、連立方程式が解けないとして、連立方程式の解き方を説明しても状況が改善しない場合、生徒さんの一次方程式に対する理解度を確認した方が近道になることが多いです。
数学の場合、問題が解けない根本原因は今現在勉強している単元にはないことが多いため、分からなくなった単元まで溯らないといけない。
取り合えず、生徒が分からなくなったところを特定するためにテストが必要になります。
まず、テストをして、間違えた問題が計算ミスか理解不足か確認する。
理解不足なら粒度の細かい内容のテストをするか、生徒にヒアリングして更にその原因を特定する。
テストの内容の粒度次第では、テスト結果次第ですぐに問題箇所が特定できます。
原因を特定できて、やっと対策を練られるわけだ。
しかし、これで対処できるのはテストで見つかった大きな穴だけ。
数学で90点取れない生徒は、小さな穴がそこかしこにあって、その小さな落とし穴にいくつもハマって少しずつ失点してくる。
大体の場合、『計算ミスしただけ』と考えてその場はスルーしてしまう。
なので、その穴が補完されることはない。
それらの小さな穴は、季節講習で洗いざらい対処するしかない。
例えば、『途中計算式を書かずに計算する』というのも小さな穴に含まれる。
大体の場合、楽をするつもりが、不正確で遠回りな計算になっています。
計算ミスが多い生徒の場合、当然、テストでも計算ミスをしてくるので点数は良くない。
上述のように、ミスの原因特定をする際にも余計な手間がかかるため、不利が多い。
計算ミスが多い生徒は小さい穴が山のようにあるので、大きな穴だけを対処しても点数が上がらないことがある。
逆に小さな穴を潰していった方が、大きく点数が上がることすらある。
当然、穴の数が多ければ、穴を潰すには時間がかかる。
新しく学んだことや、分からないことを復習して貰った後、理解できたかどうか確認する目的と、学んだことを定着させる目的でまたテストをするわけだ。
そこでNGなら、またやり直しだ。
『生徒の分からないところを的確に見つけて』という考え方は、適切ではあるが短時間では出来ないわけだ。
『分からなくなった箇所を生徒本人に確認すれば?』と思われるかもしれない。
しかし、生徒の自己申告は当てにならない。
『1次関数が分からない』と自己申告された場合、大抵『比例』が分からなくて、場合によっては『分数』の時点から分からなくなっていることがある。
成績を上げたい場合、『その生徒毎に違うペースで勉強して貰う』ことは可能だが、『自分の好きなペースで勉強したい』とかは、まぁ無理なわけだ。
死ぬほど頑張れとは言っていないし、プライベートの時間を全て犠牲にして欲しいとも言っていない。
部活と勉強の両立もして欲しいと思っている。
でも、
『これまで通りの生活で成績を上げるのは難しいよ。』
とは言いたい。
【補足】
『分からなくなったところを自分で認識して、その原因に対処する』勉強方法は実に効果的です。
他人が『生徒の分からなくなったところ』を特定するのが大変なだけで、『自分で客観的に理解不足を認識できる』のであれば、理数系科目は最短距離で習得できます。
少なくとも、それだけで早稲田大学・慶応大学の理工学部を合格できる程度には。
ただ、そのスキルを生徒に身に着けさせることが難しいです。